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Jellicle Cooking

ようこそ!

最終更新日: 2018-11-11
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【赤】不格好

【黄】真似っこ

【青】全力拒否

【緑】影日陰

【黒】静かなる

苔むしたもみの木

一言で言えば、やや残念である。
ランペルティーザは手に付いたアイシングの砂糖をペロリと舐めて、
目の前に並んだ大量のクッキーを改めて眺めた。

「味は悪くない」

というのがメンバーの一致した見解だった。
なるほど卵の殻だって全然気にならないし、
甘さだってランペルティーザにはちょうどいい。
香ばしさが過ぎる物も少なからずあるが、それはそれで悪くない。
しかし、何だか残念なのだ。

「不器用なのかな?センスがないとか?」
「どちらも当たっていると思うわ」

思わず呟いたランペルティーザに、ヴィクトリアが言葉を返した。
とかく、彼女たちにしろマンカストラップとマキャヴィティにしろ細かい芸は得意でない。
アイシングをしてみればはみ出したりムラができたり、うまくいかない。
もみの木のはずがただの不可思議な緑っぽい物体になる。
色が混じって黴のようだ、とはランペルティーザは流石に口にしなかったが
それを作ったマキャヴィティは「苔みたいだな」と独りごちた。

「疲れるな。何故だろうか」

やたら厚く砂糖を盛っているマンカストラップは手を止めて首を回した。
無駄な力が多いのは明白だ。
先ほどから何枚もクッキーが潰れているのもそのせいだろう。

「いいのよ、疲れるほど甘いものは美味しく感じるし」
「まあ、そうだな」

坦々とアイシングを施しているヴィクトリアの前には、
白い雪だるまが大量に広がっている。
まだ目も入っていない物体をひたすら作り上げているヴィクトリアは、
彼女なりに既に十分満足していた。
食べられるものができた。ただ、それだけだけれど。

「悪くないわ」

初戦とすれば戦果は上々だろう。
珍しく満足げな親友の呟きに首を傾げたランペルティーザは、
それでも「そうね」と同意した。
チームリーダーのヴィクトリアが満足しているのだ。
その事実に、残りのメンバーたちも何となく満足感を覚えながら
また一つ不格好なクッキーを作り上げてゆく。

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