Jellicle Battle

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最終更新日: 2018-11-11
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Jellicle Battle

思いがけない客と最初の選択

どれほど放置されていたのかはわからないが、廃屋の中はそれほど朽ちてはいない。
手付かずになった庭は荒れ放題だし、雨風に晒された外壁は汚いの一言では足りないほど酷い。

「そことか、そっちも、所々床が腐ってそうだな」
「ねー。あ、ジェミマ危ないよ」

古いものから新しいものまで、家屋に侵入するのは朝飯前の泥棒猫たちを先頭にして
街の猫たちは建物の真ん中から東に向けて上っている階段をそろそろと進む。
階段は途中で180度折れて2階のど真ん中に出てくる。


「スタート地点はこの場所だ。ファイトの邪魔さえしなければどこで見物してもかまわない」
「どこでもって、やっぱりここだろ」

2階の西北側は吹き抜けになっている。
コリコパットがそこに駆け寄って、柵の間からひょいと下を覗き込む。

「危なくないか?」
「んーと、これはたぶんプラスチックだね。木の模様のシールでコーティングしてあるだけかな。
 少しくらい押したって大丈夫そうだけど、あまり体重は掛けないほうが無難かも」

柵を検分しながらスキンブルシャンクスが言えば、マンカストラップは納得したように頷いた。
日々、迅速さと正確さをモットーに客車の点検にあたる鉄道猫が言うのなら間違いないはずだ。

「最悪落ちたとしてもたいしたことないわね」
「所詮は人家の2階だしな」

泥棒猫の楽天的な発言は今に始まったことではない。
だとしても、彼らは猫だ。
多少高いところから落ちたってなんてことはない。
というわけで、観戦場所は2階の踊り場ということで異論は誰にもない。

「この家、子供は一人だったのかなしら。これ、子供部屋みたい」
「どれどれ?あら、本当。パンダのぬいぐるみがあるわ。バブのお気に入りとそっくり」

ヴィクトリアとタントミールが覗き込んでいるのは、2階南側の突き当たり右手にある部屋。
大きな観音開きの出窓からは真昼間の明るい光が燦々と降り注いでいる。
もはや何色だったのかもわからない襤褸切れがカーテンレールにまとわり付いて、
かつてはそこに光を遮るカーテンがかかっていたことを知らせている。

「あ、パンダさん。わたしのパンダさんと同じ!」
「ほんとだ。でも、これくらい見事に埃まみれだとただの熊に見えなくもないかな」

幼子とともに部屋を覗き込んだミストフェリーズは苦笑しているが、
シラバブは見ることのない人の部屋に興味津々のようだ。

「小さい子がいたのかな」
「学校には行っていたと思うわ。このデスクは学校に行く前の子には早いもの」
「そういうものなの?」

中に入りたそうなシラバブを引き戻しながらミストフェリーズとヴィクトリアは話を続け、
タントミールは扉の外れたクローゼットの中を楽しそうに見つめている。

「飼われていたら感慨もあるのかしら」
「どうなのかしらね。飼われた事がないからわからないわ」

友達の様子を窺いながら、ジェリーロラムとジェミマは首を傾げた。

「左側の部屋はここの主人のものだろうな。あまり騒ぐなよ、埃が舞う」

好奇心旺盛な猫たちのことだ、いつ誰がここに飛び込んで引っかき回すかしれたものではない。
先に釘を刺して置いても慎重すぎることはない。
マンカストラップはそれぞれに遊び出しそうな猫たちを一所に集めた。

「さあ、始めよう。バトルに参加する順番はチーム内で自由に決めてもらってかまわない。
 フラッグは一階のどこかに用意される、早い者勝ちだ。
 ここから飛び降りることもできるが、そうだな、一階までは階段を使うルールとしよう」
「そうしてくれると助かるよ」

おばさん猫が同意したので、当然誰も反論を差し挟むことはない。

「よし、では早速第一バトルだ」

そう言うと、マンカストラップは吹き抜けの柵から顔を出した。

「準備オッケーですか?」
「おうおう、いつでもかまわんぞ!」

リーダー猫の問いかけに陽気な声が答える。
それを聞いたギルバートとコリコパットは思わず顔を見合わせた。

「僕、あの声に聞き覚えが・・・」
「俺も」

なぜこんなところにいるのかまるでわからない。
他の猫たちも戸惑った表情を浮かべている。

「おや、ジョーンズ。あんた何をしているんだい?」

マンカストラップの隣から下を見て、ジェニエニドッツは呆れたように訊ねた。
そこにいるのは言わずと知れた大人物、バストファジョーンズ氏だ。
ビロードのように艶やかな毛並み、血色の良い顔、でっぷりとした腹。

「なあに、おもしろそうなことをやると言うから見に来たのさ。今日は委員会もないしね」

政治家猫はご機嫌のようだ。

「暇か」
「暇だろ」

ランパスキャットとカーバケッティはぽつりと言葉を交わした。

「彼にはフラッグを用意してもらうことにした。
 フラッグの場所は対戦ごとに変わるから臨機応変に対応するように。
 よし、各チーム代表を決めてくれ」

リーダー猫の言葉で、各チームはそれぞれに固まってひそひそと打ち合わせを始めた。
実際の所、打ち合わせなのか談笑なのか揉めているのかは当事者いがいわからない。
赤チームはランパスキャットを中心に、主人の部屋らしき場所の入り口に陣取っている。
黄チームはマンカストラップを囲んで、子供部屋で話を始めた。
青チームは何とはなしにスキンブルシャンクスが取り纏める形で吹き抜けの東側にある
元はバスルームと思しき場所で話し合っている。

「そろそろ各チームとも決まったか?よし、ならば早速開始だ。
 フラッグの場所はここから見える限りであらかじめ確認してもいいぞ」

一階部分はスペースを隔てる壁も扉も無い。
吹き抜けの真下はリビングスペースになっていたのか、頑丈そうなローテーブルと
変色して元の色はわからないがそれなりに立派なカウチがある。
そのカウチにぶっすりとフラッグが挿されている。
もう一本は一瞥しただけでは確認できない。
割れたカウンターキッチンの台に転がっているのは四角い花瓶だけだ。
その前には二脚の椅子が並んでいて、もう一脚は倒れている。
見えない部分にはダイニングテーブルがあったはずだ。
色んな物が散乱してはいるが、かつて誰かが生活していた名残はそこここにある。

「さあ、スタートだ。各チーム代表は?」

皆が見守る中、3匹の猫たちが一歩前に出た。

「こりゃまた・・・」

ひゅっと口笛を吹いてラム・タム・タガーがニヤリとした。
第一バトルは女の闘いのようだ。

「おやおや、思いがけない相手だね」

ジェニエニドッツは苦笑を浮かべた。

「お手柔らかに」

カッサンドラはいつものように微笑む。

「手強そうね」

妖しげな笑みを湛えるのはボンバルリーナ。

「なるほどね。おもしろそうじゃないか」

ミストフェリーズがくすくすと笑う。
取っかかりとなる一戦だ。
各チーム、最年長の雌猫を出してきた。

「では、階段の前に立って」

縞のリーダー猫は坦々とゲームを進行する。
この選択が吉と出るか凶と出るか。

もう間もなく、闘いの火ぶたは切って落とされる。

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この話は全然面白くないんですよ。
一応ステージとなる場所の説明いるかなと思って書いたので。。。
ついでに、今までで他の誰よりも出番が少ない御方を出してみました。

対戦相手とか、誰が勝つかとか、もう決めました。
自分で決めると手心加えちゃうのでプログラムに決めてもらいました。
結果ありきでストーリーを作るべし!
クッキングの時はネタありきで作ったので、
当て嵌める作業という点では同じ(ということにしておく)。

軽いノリで、猫の記念日までに終わればいいけど。。。

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