Jellicle Battle

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最終更新日: 2018-11-11
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Jellicle Battle

この素晴らしき勝利に乾杯

二本のフラッグは、両方二階から見える位置にセットされた。
一方は汚れて白く濁った大きな窓に立てかけられている。
もう一方はやや見えにくいが、カウンターキッチンの近くに倒れている椅子に立っている。
ほぞの外れたほぞ穴にでも立てたのだろう。

「当然、点数高い方狙うよな」

独りごちて階下を一瞥したマンゴジェリーは、
その僅かの時間でめざすべき獲物とそこまでのルート計算した。
泥棒稼業をやっている彼なら何てこと無い作業だ。
大きい方のフラッグは倒れた木の椅子にささっている。
目視で確認できる障害物は転がったガラス瓶と数枚の割れた板、木片、
子供のおもちゃと思しきプラスチックの物体。
所々床が腐っていそうに見える部分もあるから、それらを全て考慮に入れた最短距離を頭に叩き込む。
勿論、もう一方のフラッグの場所も正確に記憶してある。
何事も保険は必要だ。

「スタート勝負だな」

じっとフラッグを見下ろしていたマキャヴィティはぽつりと呟いた。
がっちりと締まった筋肉質の身体はいかんせん重い。
ただ、マキャヴィティにはそれを補って余りある身体能力が備わっている。
速さと身軽さを兼ね備えたコリコパットとマンゴジェリー相手だが、
最初からエンジンを全開にすれば負けることはない。
スタートダッシュさえ付けば、身体を並べての勝負は重量がある分圧倒的に有利だ。
狙うは高得点のフラッグのみ。

「どうしよう」

眼を細めたコリコパットは、椅子に立っているフラッグを見つめていた。
男たる者、当然点数の高いフラッグを獲りに行くべきだ。
堅実に点数を積み上げるため、周りの状況を見て小さいフラッグを獲りに行くという計算は、
コリコパットの中にはまるで存在しない。
チームのリーダー格のスキンブルシャンクスは、基本的に個々の意思に任せる方針のようで
どうしたらいいかというような指示は出さない。
ただコリコパットも、速いマンゴジェリーと重いマキャヴィティと正攻法でぶつかるのは
勝ち目が少ないということは理解している。

「よっし、完璧」

マンゴジェリーはニヤリとしてスタート位置に移動する。
完璧なコース取りのためにはスタート位置も重要で、そこは早い者勝ちだ。

「負ける気はしないな」

マキャヴィティも階段前に立った。
彼の重みの所為か、床が軋む音がする。

「いつでもいいよ」

足許に落ちている天上の一部と思われる板を脚の先で追いやりながら
コリコパットは目を煌めかせている。

「よし、準備はいいようだな。バストファさん、始めて下さい!」

マンカストラップが階下に声を掛ける。

「よしよし、それでは。On your mark...」

マンゴジェリーの口許から笑みが消えた。
マキャヴィティの四肢に力が籠もる。

「Get set !」

コリコパットの目つきが鋭くなる。

「Go!!」

マンゴジェリーの両側から一瞬にして対戦者たちの気配が消えた。

「・・・っ!?」

周りの速さに驚くマンゴジェリーの視界の端、階段の手すりの上にライバルはいた。
見事な瞬発力で、スタートと同時に足許の板を蹴り上げて手すりに載せ、
そこに自分自身を乗せて勢いよく滑り下りているコリコパットが。
天性のスピードを持つマンゴジェリーを持ってしてもかなわない瞬発力。
ぐんぐん加速する板のソリ。
階段が折れる手前で、薄褐色の小柄な雄猫は全体重を掛けてソリの方向を変えにかかる。

「うおおおおおおおっ」

コリコパットの雄叫びが階段に響き、十分な運動エネルギーを得たソリが手すりから飛び出す。
ずばっという奇妙な音がした。

「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ...」

コリコパットの絶叫がフェードアウトする。
彼の姿も皆の視界からフレームアウトした。
壁に綺麗な彼自身のシルエットを穿って。
カラン、と小気味よい音を立ててソリになっていた板が踊り場に落ちた。

「見事・・・じゃねえ!」

誰も、何も言わない。
全員が呆然とする中、マンゴジェリーも例外では無かったが、
気を取り直すと階段へと一歩踏み出し、そこで違和感に気付いた。

「・・・穴?」

後ろ脚の辺りに妙な空気の流れを感じるのだ。
振り返り見れば、廊下に穴が開いている。
まるで誰かが腐った床を踏み抜いたかのように。

「念のため聞くけど」

マンゴジェリーは身体ごと振り返って、近くに立っていたマンカストラップに目を向けた。

「マキャは?」

予想を全く裏切ることなく、縞猫は穴を指し示した。

「これは下の床も突き抜けてますね」

先に穴を覗いていたギルバートが顔を上げて言う。

「何があったんだ?」
「予想は付くと思いますが」

ギルバートはそう前置きして、何があったのかを説明した。
それはほんの少し前、コリコパットが板を蹴り上げたのとほぼ同時に起きた。
膨大なエネルギーを溜めたマキャヴィティの後脚が廊下を蹴ったその一瞬のこと。
彼が重い身体を自在に操り、ヘビのようにしなやかで俊敏に動き回りつつ、
どのような獲物も瞬時に仕留められるほどのパワーを発揮できるのは、
スムーズに体重を掛ける位置を移動させることができるからだ。
後脚に掛けた体重を、前に飛び出すエネルギーに変換して一気に駆け下れば
速さ自慢のマンゴジェリーとも十分勝負できる。
だが、マキャヴィティに打ち負かされたのは猫たちではなかった。
一部だけ剥がれた天上から雨漏りしていて、腐りかけていた廊下がそのパワーに負けたのだ。

「マキャのことなので大丈夫とは思いますが、未だ出てこないですね」
「へえ・・・」

他の猫たちも踏んでいたはずの場所だが、どれだけの負荷を掛けたのかわかりたくもなかった。
壁に穿たれた猫型と、廊下に開けられた穴を交互に見やり、
マンゴジェリーはひょいひょいと軽く駆けて一階に下りた。

「バストファさん、これ両方回収していいのか?」
「うむ、ダメとは聞いていないな」

大きな腹を揺らして、何が楽しいのかほっほっと笑う政治家猫を横目に、
マンゴジェリーは大小二つのフラッグを手にした。

「釈然としないけど」

赤毛の泥棒猫が二つのフラッグを差し出すと、
太っちょの猫はいかにも大人物らしくもったいぶった仕草で頷いた。

「第三バトル終了!結果は、マンゴジェリーに三ポイント!」

階上からは歓声と溜め息とブーイングが聞こえる。


「文句なら壁抜け男と床抜け男に言えよ。
 言っとくけど、俺はまともに勝負するつもりだったんだぜ。
 でもさ、良いのか悪いのか始まる前に終わっちゃったんだ仕方ねえ」
「そうだね、仕方ない」

おかしそうにクスクスと笑いながらスキンブルシャンクスが同意した。

「マキャは運が悪くてコリコはちょっと頭が悪かっただけだ。
 みんな一生懸命勝負しようとした結果だもの、マンゴの勝ちは正当なものさ」
「とりあえず、コリコとマキャは自分で戻ってくるだろうからこのまま続けるとしよう。
 次、スタンバイしてくれ」

動じないのはリーダーとして優れた資質だ。
マンカストラップが声を掛けると、次の対戦者たちが顔を上げた。

「俺の出番か」

妙な空気の中で、冷静に立ち上がったのはカーバケッティ。

「全然負ける気がしないね」

金の瞳をきらりと光らせてほくそ笑むのはミストフェリーズ。

「ここで挽回しないとね」

鋭い目を雄猫に向けて呟くのはディミータ。

「良い闘いを期待している」

マンカストラップは三匹の猫たちに微笑みかけた。
何せ、こんな試合の直後だ。

「黄色チームをこれ以上調子に乗せるとマズイしな」
「要するに、私が一番を獲ればいいのでしょう?」

カーバケッティは静かに、ディミータは熱く闘志を燃やす。

「勢いはまだまだ僕らにあるよ」

ミストフェリーズは余裕の表情だ。



そしてまた、新たな闘いが始まる。

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制御しなかったら、マンゴジェリーが二本獲りという結果に。。。
二本とも取得できるということは、相手がいないという状況と考えるのが楽。
というわけで、コリコとマキャには退場していただきました☆

途中経過はこんな感じ。

第 3 バトル
赤:マキャヴィティ VS 黄:マンゴジェリー VS 青:コリコパット !!
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フラッグ(大)獲得 >>> マンゴジェリー
フラッグ(小)獲得 >>> マンゴジェリー
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赤:2 ポイント 黄:5 ポイント 青:2 ポイント
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Σ(゚□゚(゚□゚*)ナニーッ!!
第 3 バトル 終了。お疲れ様でした☆
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黄色チームがかなり飛び出ました。
さてさて、ここから他のチームは挽回しなくてはなりませんね。

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