第六勘
「これは俺の勘なんだけど」
休暇のために割り当てられた宿舎の一室で、
雑誌を流し読みしていたマンゴジェリーが唐突に口を開いた。
欠伸を途中で止めて、マンカストラップが何だと座りなおす。
「ランパス、だけじゃないな。カッサもだ。あいつら、薄々感づいてるぜ」
手荒く雑誌をラックに突っ込んで苦々しそうに呟くマンゴジェリー。
「何の話だ?」
マンカストラップは首を傾げる。
そして、ハッとしたように己の頭に両手をやった。
「まさか・・・!俺のここら辺が薄くなってきてることに・・・」
「ああ、そうだ」
かなり真剣に叫んだマンカストラップに、思わずマンゴジェリーは頷いた。
「・・・って、そんな事どうでもいいから!」
「そんな事とは何だ!?こっちは真剣に悩んでるんだ!」
「だからハゲんだよ!」
唾のかかるほど至近距離で怒鳴り合うふたり。
大きなため息とともに身を引いたのはマンゴジェリーの方が先だった。
そう、こんな馬鹿らしい言い合いをしている場合ではない。
「おい、マンカス。しっかり聞けよ」
声をひそめ、注意深く気配を窺うマンゴジェリーの目が真剣さを増す。
「いいか。ランパスとカッサは、俺たちがグロールタイガーの部下だと
気付いている可能性がかなり高い」
「なんでそんな事」
「言ったろ?勘だって」
マンカストラップは眉を寄せた。
これでマンゴジェリーの第六感はかなり鋭い。
「ランパスなんか、今でこそこの部隊でのんびりやってるけど
以前はかなり戦場でこき使われてるみたいだし、どっかで見られてても不思議はない。
カッサンドラの情報収集力も大したもんだ」
「仮にランパスやカッサが気付いているとしたらギルバートにも言っているだろうな」
ギルバートを葬りに来た。
彼らの長、グロールタイガーを葬った男を。
同害報復。
それが、海を墓場と決めた荒くれ者たちの掟。
「やっかいなのは、ランパスやカッサが
ギルバートを守るためなら命をかけてくるだろうってことだな」
「どうして命をかけてまで?」
「何があったかは知らねえよ」
でもやっかいなことに変わりはないと言って、
マンゴジェリーは簡易ベッドに仰向けに寝転がった。
「早く始末したいが、今はまだ時機じゃない」
マンカストラップが呟くように言うと、当然だと即答される。
「中央にスキンブルがいるだろう?とりあえずコンタクトを取りたい。
こんな部隊の中からだけじゃ見えてくるものも見えてこない」
好きなように進めばいいとグロールタイガーは言った。
早く、こんな堅苦しい制服は脱ぎ棄てて海に帰りたい。
だが、その前に海賊の掟だけは守らなければならない。
そしてまた、仲間たちとともに海に出て行くのだ。
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